Ⅱ型呼吸不全とは、その名を拘束性換気障害
Ⅰ型、Ⅱ型呼吸不全と聞かれてパッと思いつきますか。私は思いつきませんでした。
ということで以前のエントリで閉塞性、拘束性について述べましたが、今回は拘束性換気障害の運動療法といった内容です。
胸郭の変形や拘縮などに伴う胸郭拡張不全から肺胞低換気によるⅡ型呼吸不全。
つまり拘束性換気障害ですね。拘束性換気障害は吸えない病気です。肺はガチガチで弾性力が失われている状態です。%肺活量80%以下ですね。ここは基本です。
※閉塞性換気障害では、吐けない病気。肺は弾性力はある。一秒率は70%以下です。
今回の症例問題です。
82歳男性。肺結核後遺症によるⅡ型呼吸不全。50年前に施行した胸郭形成術により右肺はほぼ機能していない。右胸郭の可動性も乏しいが、痰の喀痰は可能。
%VCは41%、FEV1.0%は50%。安静時のSPO2は93%前後であるが。6分間歩行テスト終了時には83%まで低下した。優先度の高い理学療法はどれ。
1.体位排痰法
2腹式呼吸練習
3下肢筋力トレーニング
4インセンティブスパイロメトリー
5非侵襲的陽圧換気を利用した自転車エルゴメータートレーニング
1は文章より出てきているので、優先度は低い。不適切
2は胸郭形成術後の場合は、胸郭の変形や可動性の低下を伴っていることが多いため、特に胸郭へのアプローチが重要となる。Ⅱ型である拘束性換気障害の場合は、吸えないが、吐ける病気なので、腹式呼吸よりも、ガチガチに固まっている胸郭の可動性を上げる方が優先される。よって不適切。閉塞性の場合は吐けないので呼気時間を長くするために腹式呼吸は大切であると考えられる。
3の下肢筋力トレーニングは下肢筋力が低下するとADLの低下に繋がるため下肢筋力トレーニングは必ず行なう。優先度高い。適切である。
4:まずインセンティブスパイロメトリーとは、患者の吸気を視覚的、聴覚的にフィードバックする器具を使用して呼吸する方法である。自分の口にチューブ的なものを装着し、吐いたとき、吸うときにモニター画面のメーターがビヨビヨしていくように自分の呼吸が視覚的に表示されるのがそれ。
これの目的と効果は、手術後の抹消気道閉塞の予防、拡張不全の認められる肺胞の再拡張、無気肺の予防と改善などがある。つまり閉塞性換気障害(Ⅰ型)に使われるということ。よって、この目的と効果をみると本症例の患者には不適切である。違う。
5。非侵襲的陽圧換気を利用した自転車エルゴメータートレーニング
この文章だけやたら気合入ってるので読むのも意味もやる気も無くなってしまう感じですが、大事なことです。
以下、非侵襲的陽圧換気の説明
なるほど、挿管をしない、換気を補助する人工呼吸器ということですね。非侵襲的陽圧換気の説明でえらい尺を使ってしまいましたが、これが分かってないとなかなか選択肢の否定ができないものです。その器具を使った自転車エルゴメータートレーニングはどうか、という問題です。
非侵襲的陽圧換気は、換気を補助することで肺胞換気量を増加させることができるため、運動時の換気を増やすことが出来ない拘束性換気障害(Ⅱ型)に対して有効である。
この患者は肺活量が著明に低下(くどいですが拘束性換気障害)しており、換気不足によるⅡ型呼吸不全を呈している。そのため運動時の低酸素血症はこれに起因していると考えられている。
自転車エルゴメータートレーニング時に非侵襲的陽圧換気装置により換気補助をすることで運動負荷量や運動継続時間の増加の効果が期待できる。よって適切。
答えは3と5。
まずⅡ型呼吸不全がなんなのか、文章読んでも分からないと選択肢の否定が難しいのと、閉塞性、拘束性での理学療法を分かっていないとそれぞれの選択肢を選べない。
あわせて確認しておきましょう。