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脊髄完全麻痺者のADL

脊髄損傷の損傷レベルでADLがどのように影響するのか。よく出題されますね。ここで確認しておきましょう。

 

損傷レベル:C1~C3

主な動作筋:胸鎖乳突筋

運動機能:頭部の前屈・回転

移動:電動車椅子(下顎などを力源として操作)

自立度:人工呼吸、全面介助

 

損傷レベル:C4

主な動作筋:横隔膜、僧帽筋

運動機能:吸気、肩甲骨挙上

移動:電動車椅子(下顎などを力源として操作)←C1-3と同じ

自立度:全面介助だが環境を整えて部分介助

 

損傷レベル:C5

主な動作筋:三角筋上腕二頭筋

運動機能:肩関節屈曲・外転・伸展、肘関節屈曲、前腕回外

移動:車椅子駆動(平地)ハンドリムに工夫の余地あり

自立度:重度介助、自助具による食事動作、スリング使用により体位変換可能、上肢更衣の介助、下肢更衣の依存

 

C6

主な動作筋:大胸筋、橈側手根伸筋

運動機能:肩関節内転、手関節背屈

移動:車椅子駆動(実用的)

自立度:中等度介助、寝返り、上肢装具などを使って書字可能、上肢更衣は自立、下肢更衣の要介助

 

C7

主な動作筋:上腕三頭筋、橈側手根屈筋

運動機能:肘関節伸展、手関節背屈

移動:車椅子駆動、移乗動作可能(ベッド間車椅子間トイレ)、自動車運転可能

自立度:車椅子にてほとんどが自立、更衣は器具使用にて上肢下肢ともに自立の可能性あり

 

C8~Th1

主な動作筋:手指の屈筋群、手内在筋

運動機能:手指の屈曲、手の巧緻動作

移動:車椅子駆動、自動車運転

自立度:車椅子にて大部分の日常生活が自立

 

Th6

主な動作筋:上部肋間筋、上部背筋

運動機能:呼吸予備力増大

移動:骨盤帯付き長下肢装具、松葉杖にて歩行可能、実用的には車椅子

自立度:介助はほとんど不要

 

Th12

主な動作筋:腹筋、胸椎部背筋

運動機能:骨盤帯挙上

移動:長下肢装具、松葉杖にて歩行可能(階段昇降可能)

自立度:介助はほとんど不要

 

 

L4

主な動作筋:大腿四頭筋

運動機能:膝関節伸展

移動:短下肢装具、一本杖にて歩行可能

自立度:介助はほとんど不要

 

 

 

以上が主な脊髄損傷レベルとADLになります。

C5になると車椅子での移動が出来ます。その際にはハンドリムに工夫がいります。

また、上腕二頭筋が動作するので前腕の回外も可能となります。ここも併せて覚えておきましょう。

C6では肩関節内転、手関節背屈が運動機能として残存します。腱固定作用によるテノデーシスアクションはこの段階で行えます。よって上肢装具を使って書字が可能となります。寝返りも可能になることもポイントです。更衣も上肢は自立します。これも大きいですね。キャスター上げもここからです。

C7では上腕三頭筋と橈側手根屈筋が残存することで肘関節伸展、手関節掌屈が可能となります。よく残存レベルの問題で出題されてますので、C7は上腕三頭筋はしっかりと抑えておきましょう。また、このレベルでは移乗動作が可能となります。更衣は器具使用にて上下肢のとも自立の可能性があります。

C8では手指の屈筋群と手内在筋が残存するので、手指の屈曲が可能となり、巧緻動作が可能となります。

 

というわけで問題です。

37回66問

脊髄損傷(C6まで機能残存)に対する理学療法で適切ではないのはどれか

  1. 肘関節屈曲の抵抗運動
  2. 標準型車椅子の操作訓練
  3. 車椅子から床への移乗訓練
  4. 座位バランス訓練
  5. 呼吸訓練

ポイントは、C6までの機能残存では、上腕二頭筋、橈側手根伸筋などの筋力は残存しているが、上腕三頭筋の筋力は残存していないことです。

 

1では肘屈曲は上腕二頭筋が残存しているので、この運動は可能。適切です

 

2はC6残存ならば標準型車椅子を使用できます。これも正しい

 

3の車椅子から床への移乗訓練は、上腕三頭筋が残存していないため、肘伸展によるプッシュアップ動作が必要な車椅子から床への移乗動作は困難となります。よってこれは不適切。

 

4の座位バランス訓練は、上腕三頭筋が残存していなくても肩甲骨の内転固定と、肩関節軽度屈曲、外旋と前腕回外による肘関節伸展位、いわゆる肘ロックで座位保持は可能となるので、座位バランス訓練は正しい。

 

5の呼吸訓練は、頸髄損傷患者は肋間筋麻痺による胸郭の運動制限があるため、呼吸訓練を行う必要がある。

 

よって不適切は3になります。

 

座位バランスは肘伸展が出来ないと難しいと思いがちですが、C6では肘ロックをさせて座位保持が可能となるので、これはある意味引っ掛けの問題でしたね。

また、車椅子から床への移乗では肘伸展によるプッシュアップが必要なためこれはC6では難しい動作となります。

 

第40回70問

脊髄損傷の機能残存レベルと筋力増強訓練との組み合わせで適切ではないのはどれか。

  1. 第1腰髄節ー骨盤帯挙上
  2. 第2腰髄節ー股関節屈曲
  3. 第3腰髄節ー股関節外転
  4. 第4腰髄節ー膝関節伸展
  5. 第5腰髄節ー膝関節屈曲

上であれだけ書いといてこういう問題ですが、機能残存レベルでどの筋肉が残存しているかを分かってないと難しい問題です。

ポイントは脊髄損傷では機能残存レベルでそれぞれ支配神経を受ける筋の筋力増強訓練を行なうということです。残存していないのに筋力増強しても意味をなさないということですね。

 

1の骨盤帯挙上の主動作筋は腰方形筋であり、この髄節レベルはTh12~L3となります。筋力増強は適切となります。

 

2は股関節屈曲の主動作筋は腸腰筋であり、この髄節レベルはL2~L4となっております。これも適切です。

 

3は股関節外転筋の主動作筋は中殿筋であり、これの髄節レベルはL4~S1となっており、選択肢のL3は不適切で筋力増強訓練はなりません。これはバツ。

 

4は膝関節伸展は大腿四頭筋が主動作筋となるのでこれの髄節レベルはL2~4である。これは適切。

 

5膝関節屈曲の主動作筋はハムストリングスとなっており、これの髄節レベルはL4~S2です。これも大丈夫。

 

ということで、この問題は筋の支配している髄節レベルを分かっていないと解けない問題でした。

 

脊髄損傷では上記のADLだけでなく、支配している神経と主動作筋による筋の動きを把握すれば他の問題にも対応できることもあるので、広い分野をおさらいする感覚で進めていきましょう。例えば、前腕を回外に作用するのは実は上腕二頭筋もあるよ、といった具合です。

 

難しい問題ですが、確実に抑えて点を取りに行きましょう。